漢方の知恵で女性の疲れを解消!

疲れたら休めばよいのは誰もが分かっていても
多くの人が日々解消できない疲れを抱え込んでいる現代。
もしかしたらケアの仕方が間違っているのかもしれません。
今回は漢方の観点から疲れをタイプ分けし、その対策を紹介。
仕事や家事に忙しい女性の疲れを解決します。

東京女子医科大学附属東洋医学研究所准教授

木村 容子 先生

きむら・ようこ お茶の水女子大学卒業後、中央官庁入省。英国オックスフォード大学大学院留学中に漢方と出会い、帰国後退職して東海大学医学部に学士入学。2002年より東京女子医科大学附属東洋医学研究所に勤務。医学博士。日本内科学会認定医。日本東洋医学会専門医、指導医。著書に『女40歳からの「不調」を感じたら読む本』『カラダとココロの「プチ不調」に気づいたら』(静山社文庫)、『太りやすく、痩せにくくなったら読む本』(大和書房)他。

女性は35歳を過ぎると疲れやすくなる!?

女性ホルモンが疲れに関係

女性ホルモンの影響を強く受けている女性の体。ホルモンバランスの変動が大きい時期や年代には、より疲れやすくなるといえます。

女性ホルモンの変動が大きい時期の代表といえるのが、月経前。体温が高くなり、だるさや眠さ、疲れを感じやすくなります。これは「活動的にならないで」という体からのサインですから、サインに従って無理をしないことが大切です。

更年期になると、女性ホルモンの分泌ぶんぴつ量が急激に減り、ホルモンバランスが乱れやすくなります。女性の更年期は閉経前後の10年間を指し、一般的には45~55歳頃。ただし、ある日を境に急に更年期に入るわけではなく、女性ホルモンの分泌量は30歳前後をピークに、下降線をたどっていきます。「30代後半ともなれば女性なら誰しも、疲れやすさが気になり始めます」と木村容子先生は言います。

頑張り過ぎると老ける!?

漢方では古くから、女性は7年、男性は8年周期で体が変化すると考えられています。例えば女性は28歳をピークに、その後は徐々に「エネルギー(気)」が減っていきますから、20代でできたことが40代や50代ではできなくなるのは当然なのです。

こういった年齢変化を受け入れられない人は、「こんなはずじゃない……」とさらに頑張ってしまい、エネルギーを余計につかって、疲れやすい体になってしまいます。もともと体力のある人ほど、このような傾向があるそうです。

加齢と共に疲れやすくなるのは、体の仕組みとしては当然のこと。そこでさらに頑張るのではなく、小さなエネルギーでも疲れないような工夫、疲れをこまめにケアすることが大切です。「特に女性は頑張り過ぎると疲弊ひへいし、老けてしまいます」と先生。キレイと健康のためにも賢い疲れ対策が必要です。

女性は28歳、35歳、42歳、49歳と7年周期で体が変化。体が最も充実する28歳をピークに、以降は「気(氣)」が減っていくと考えられている。

多くの女性が抱える「貧血」も疲れの原因に。

美容面にも影響する貧血

貧血を原因とする疲れも女性特有のものです。貧血の多くが、体内の鉄が不足するために起こる「鉄欠乏性貧血」。月経によって毎月、血液を失う女性は、半数以上が貧血、あるいは貧血予備群ともいわれています。

鉄欠乏性貧血は、鉄が不足することで全身に酸素を運ぶ赤血球中のヘモグロビンがうまくつくれなくなり、体の酸素欠乏を招くというものです。貧血の症状は様々で、疲れの他、肩こりや肌荒れ、爪の変形などを引き起こします。また、鉄は皮膚のコラーゲン線維の生成にも必要なミネラル。鉄が不足すると肌の健康も損なわれて美容面にも影響します。鉄欠乏性貧血の予防・改善には、食事が大切です。レバーや肉類、魚類に多く含まれるヘム鉄は吸収率がよいのでおすすめ。海藻類や野菜、大豆などに含まれる非ヘム鉄を摂る時には、鉄吸収を促進するビタミンCを多く含む食物と一緒に摂ると効果的です。

1日に必要な鉄摂取量は、女性の場合約11ミリグラム。ただ、月経で30〜80ミリリットルの出血があると、毎月15~40ミリグラムの鉄が喪失(血液1ミリリットル中に鉄約0.5ミリグラム含有)するため、食事だけでは十分に摂取しにくいこともあります。この場合は、鉄分を配合したサプリメントやドリンク剤を上手に活用しましょう。

漢方で貧血は、「血」が不足した「血虚けっきょ」と診断される。血虚の症状としては、疲れやすいことの他、髪のパサつき、肌の乾燥なども挙げられる。

もしかして“隠れ貧血”!?

貧血は、一般的にヘモグロビン濃度で見ることが多いですが、ヘモグロビンが正常値でも、貯蔵鉄のフェリチンが不足した“隠れ貧血(潜在性鉄欠乏性貧血)”の場合も。一般的な血液検査ではフェリチンの値を測ることは少ないので、気になる人は医師に相談してみましょう。

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