脂質コントロールで血管のエイジングを防ぐ

「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。
年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。
全身の健康に通じる血管ケア。
前向きに取り組んでこれからの元気を育てていきましょう。

天野 恵子 先生

あまの・けいこ 一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。
日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。

事実、血管は年齢で変化する。

女性の血管の加齢変化には女性ホルモンのエストロゲンが大きく関係しています。
エストロゲンが減少する年代になっても若い頃と同じ食生活では危険かも。

脂質を摂っても血管はしなやか

20~30代に最も多く分泌されるエストロゲン。若い人の血管は弾力性もあり、健康的。エストロゲンには血管拡張作用もあるので、血流もよく、動脈硬化になりにくいのです。平気でケーキバイキングができるのも、エストロゲンのおかげといえるかも。

脂質を控えても血管にはプラークが……

更年期を迎えると、エストロゲンの分泌量はイヤでも減っていく。ただでさえ加齢で血管のしなやかさが失われていくのに、エストロゲンの力もなくなり、血管にはプラークができやすくなります。50代になったら血管の老化を進めないためのケアが必須。

喫煙でエストロゲンの効果が帳消し!?

閉経前にはエストロゲンによって動脈硬化から守られている女性たちでも、「その効果を帳消しにしてしまう危険因子がある」と天野先生。それが「喫煙」。タバコに含まれるニコチンの作用で血管が収縮して血流が低下。血管は硬くなり、動脈硬化が進行します。喫煙をしている女性は吸っていない人より、急性心筋梗塞のリスクが8.2倍も高まることが分かっています。

動脈硬化が人ごとじゃなくなる!

エストロゲンには、血管が正常に機能するのを助ける働きと共に、LDLエルディーエルコレステロール(次ページ参照)を減らすなど、動脈硬化を抑制する作用があります。そのためエストロゲンが多く分泌されている20〜30代までは、特別なケアをしなくても血管は比較的しなやか。これは30代から動脈硬化が見られる男性とは明らかな違いといえます。

ところが女性も閉経を迎え、エストロゲンの分泌が止まると共に、血管の硬化が急速に進みます。血液中を流れる脂質にはコレステロールや中性脂肪がありますが、これまでエストロゲンによって抑えられていたそれらの数値も自然と高くなり、血液の流れを妨げることに。動脈硬化の進行に大きく影響してしまいます。

さらにLDLコレステロールが血管の内壁にたまったものが、やがてドロドロの粥状のこぶのようになります。これがプラークです。プラークが破れると、そこに血栓ができて血管を詰まらせ、心筋梗塞こうそくや脳梗塞の発症につながるのです。

「閉経前の女性が動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞を発症する割合は低く、男性の約5分の1といわれています。ところが閉経後の55歳くらいから発症率はぐんとアップしてしまいます」と天野先生。女性は閉経後、意識的な血管ケアが必要不可欠となるわけです。

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