エイジングと生活習慣病対策に! 今から始める血圧ケア

ファミリー栄養学

たっぷり野菜でポジティブに減塩

これまでの減塩は、塩分を〝減らす〟ことが大きく叫ばれていました。でも、単に減らすだけでは料理が味気なくなり、減塩も長続きしません。そこで今回ご紹介するのが、新しい発想の〝摂る〟減塩。食事を楽しみながら高血圧を予防・改善する方法をご紹介します。

一般社団法人 臨床栄養実践協会理事長 管理栄養士

足立香代子 先生

足立香代子 写真

あだち・かよこ 1968年中京短期大学家政科食物栄養専攻卒業後、せんぽ東京高輪(現・東京高輪)病院などを経て、現在に至る。医療現場で過剰栄養に対する指導や入院患者への栄養管理を実践。『日本一おいしい病院食をつくるチーム直伝! 長生きごはん』(宝島社)他、著書多数。

「塩分を控えるだけなら、塩分の入っていない甘い物ばかり食べていればよいわけです。でもそれでは、血圧は上がらなくても健康にはなれません。主食と主菜、副菜をそろえた食事を基本にし、そこに血圧コントロールに有効な栄養素を摂り入れたり、減塩のアイデアを加えたりするのが正解です」と足立先生。

1日の食事量バランスは下の円グラフが理想です。「副菜の割合が大きいのは、野菜をたっぷり摂るため。アメリカで高血圧の食事療法として成果を上げているDASH(ダッシュ)食も、野菜を1日400~500グラム食べるようすすめています」。

摂取を心がけたい栄養素は、野菜に多く含まれているカリウムや食物繊維、魚や大豆製品などの良質なタンパク質、海藻やナッツ類などに含まれるマグネシウムやカルシウム、青背魚に含まれるEPAやDHA。これらの栄養素を複合的に摂ることで相乗効果が生まれ、血圧コントロールに有効とされています。

野菜をたっぷり食べて、必要な栄養素をしっかり摂る、ポジティブ発想の血圧低減対策で、おいしく、高血圧を予防・改善しましょう。

※Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を防ぐ食事方法)の略語

「野菜をたっぷり摂る」のは必須!

野菜や果物に含まれるカリウムは、塩分の排出を促し、血圧を正常にすることがアメリカの研究で実証されています。足立先生の指導でも、毎日450gの野菜を食べた人は、血管年齢の若返りが見られたようです。これからの減塩は、たっぷり野菜を食べた上で、今より塩分を減らしていくのがポイント。1日の野菜摂取量の目標は400~500g。その実現には、副菜は野菜料理を2品そろえ、なおかつ、みそ汁の具にも野菜をたっぷり使うなどの工夫が必要です。

1日の理想的な食事量バランス

主食 30% ……ごはん、パン、麺類など
主菜 20% ……肉、魚、卵、豆腐などタンパク質を多く含む、食事の中心となるおかず
副菜 50% ……野菜を中心としたおかず
  • サンマ

    ■主菜
    サンマなどの青背魚に多く含まれるEPAやDHAには、血圧を下げる効果が。大根おろしを添えて野菜もプラス。

  • ごはん

    ■主食
    肥満気味の人は、主食の量を減らし、最後に食べるのがコツ。丼物や麺類は味つけが濃く、食べ過ぎてしまいがち。食べる回数を減らそう。

  • 味噌汁

    ■みそ汁
    野菜たっぷりの具だくさんにすることで汁の量が減り、自然と摂取するみその量も減る。みそ汁は1日1杯に。

  • サラダ、漬物

    ■副菜
    主菜が濃い味つけの時は、酢の物や生野菜、焼き野菜などにし、味に変化をつけると、減塩が楽しくできる。

足立先生が伝授!
減塩はおいしく、楽しく!塩分を今より減らすコツ

1

かけ過ぎ、つけ過ぎを防ぐために
調味料をカスタマイズ

塩は容器を3回振る、しょうゆは料理にぐるりと1周回しかけるなど、調味料はつい、いつものクセで使ってしまいがち。クセによる摂り過ぎを防ぐには、容器を入れ替えてしまうのも一案。しょうゆはスプレータイプのボトルにすれば、出てくる量もわずか。しょうゆの風味が霧状に広がり、少量でも満足できます。塩は、スパイスやハーブなどと1対1の割合で混ぜると、いつもの量で使っても自然と出てくる塩の量が減らせます。

スプレータイプの醤油のイラスト

一般的なしょうゆさしは1回傾けると1~2g出るのに対し、スプレータイプはワンプッシュで0.1gほど。減塩しょうゆを使えば、塩分はさらに抑えられる。

2

塩分は中までしみ込ませない!
表面にだけ味をつける

舌は表面についた味を感じ取りやすいため、素材の中にまで塩分をしみ込ませる必要はありません。煮物を作る時はだしで煮込み、しょうゆは最後に足して表面にだけ味をつければ十分です。また、塩分をしみ込ませない方法として、油でコーティングするのも手。例えば、肉じゃがを作る時は、はじめに素材を油で炒めてから煮ると、中まで塩分がしみ込みにくくなります。また、素材が少し冷めてから味をつけるのも、しみ込ませないためのコツです。

肉や玉ねぎを炒めるイラスト

肉じゃがは素材を炒めてから煮込むことで、無駄な塩分を摂らずに済む。

3

カラフル野菜で1日の塩分をリセット!
夜は時々ベジタリアン

野菜の中でも緑黄色野菜は、カリウムや食物繊維の他、カルシウム、鉄、マグネシウムなどの栄養素も豊富なため、積極的に摂りたい食材。外食が続いた時や、昼食に野菜を食べなかった日の夕食は、様々な色の緑黄色野菜を盛り合わせたサラダを。カルシウムやマグネシウムが豊富な海藻、くるみやアーモンドなどのナッツを加えれば、塩分リセット効果も大!

サラダのイラスト

サラダに盛り合わせる素材は6種類以上が理想。塩分が意外に多い市販のドレッシングよりも、オリーブ油とレモンや酢、微量の塩をそれぞれ上からかけるだけの、シンプルな食べ方がおすすめ。

理想の食事ができない人はトクホのサポートを!

減塩を目指すなら、薄味とたっぷり野菜の食事が基本。とはいえ、忙しくてなかなか食事を作れない人、外食を避けられない人もいるでしょう。そこで活躍するのがトクホ(特定保健用食品)。緑茶に血圧を穏やかにするGABA(アミノ酸の一種)を配合した商品もあり、食事にプラスして飲むことで、血圧の正常化が目指せます。

トクホのお茶

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