血圧コントロールで血管力を高める!

年齢と共に血管の老化が進むと、血圧は上がりやすくなります。
高めの血圧を放置すると血管老化に拍車をかけ動脈硬化を招く原因に。40歳を過ぎたら血圧をコントロールし“血管力”を高めるセルフケアを始めましょう。

池谷医院 院長

池谷 敏郎 先生

いけたに・としろう 1988年東京医科大学医学部卒業後、東京医科大学病院第二内科に入局。血圧と動脈硬化について研究する。1997年医療法人社団池谷医院理事長兼院長に就任。専門は内科・循環器科。著書に『血管を強くして突然死を防ぐ!』(すばる舎)、『「血管を鍛える」と超健康になる!』(三笠書房)など多数。

Q140代になりだんだん血圧が高めに……。

A. 女性ホルモンの減少が関係しています。

女性ホルモンの1つであるエストロゲンは肌に弾力を与えるなどの他、血圧を正常に保つ働きもあります。そのため、女性ホルモンがしっかり分泌されている年代では高血圧のリスクは比較的低いのですが、分泌が低下する更年期は血管のしなやかさが失われやすく、高血圧のリスクが高まります。高血圧予備群を含めると女性の場合、40代では4人に1人、50代では2人に1人が高血圧と推計されており、更年期以降の女性の高血圧は決して少なくありません。

その他、高血圧を招く原因には、塩分の過剰摂取や喫煙、肥満、運動不足といった生活習慣や遺伝なども関係しています。また、40〜50代は仕事や家事、親の介護など、多忙を極める時期でもあります。慢性的な睡眠不足やストレスも血圧を上げる要因になるため、注意が必要です。

Q2血圧がどのくらいになったら病院に行くべき?

A. 最高血圧135㎜Hg、最低血圧85㎜Hg以上が目安です。

高血圧は“サイレントキラー”と呼ばれ、自覚症状がないまま進行しやすい病気です。女性は男性に比べて健康診断の受診率が低く、高血圧になるまで気づかないこともしばしば。高血圧を放置してしまうと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞、認知症などの疾患につながります。

高血圧のリスクが高まる更年期は、検診を受けることに加え、日頃から家庭で血圧を測る習慣をつけましょう。

検診で正常値でも要注意!早朝高血圧

検診では正常値なのに、自宅や職場で血圧を測ると高くなる場合を「仮面高血圧」といい、検診では見逃されてしまいます。中でも特に気をつけたいのが、朝に血圧が高くなる「早朝高血圧」。検診で問題がなくても、起床後急激に血圧が上昇する“モーニングサージ”により心筋梗塞こうそくや脳卒中を引き起こす場合があります。そのため、朝に家で血圧を測る習慣をつけ、検診の際にその数値を伝えることが大切です。

正しい血圧の測り方

測るタイミング:朝起床後1時間以内(排尿後、朝食前)、就寝前
各時間帯にそれぞれ2回ずつ測り、その平均または最高血圧の低かったほうの数値を記録する。

測り方のポイント:いすに座り、腕に巻いたマンシェットの部分を心臓の高さにする。

※測る腕は、左右どちらかに決めておく。一般的には利き腕の反対。

血圧値の分類

Q3高血圧は美容にも影響するの?

A. 血管力の低下を招き肌老化につながります。

“血管力”とは、血管全体のしなやかさを保ち、血管内壁を滑らかにし、血液をスムーズに循環させる力のこと。血管力を低下させる要因は、加齢や高血糖など様々ですが、その1つに高血圧が挙げられます。

ホースに強い水圧がかかると劣化しやすいのと同様に、常に血圧が高い状態が続くと血管は傷み、しなやかさや内壁の滑らかさが失われてしまいます。

血管力が低下すると、血液はスムーズに循環しにくくなり、血液によって運ばれる栄養や酸素が肌の細胞へ行き届きにくい状態に。その結果、肌のハリの低下やくすみといった肌老化につながるのです。また、血管力の低下は、やがて動脈硬化へと進行し、重篤な疾患(Q2参照)のリスクを高めます。美しく、健康でいるためにも血圧をコントロールし、血管力を高めましょう。

動脈硬化はよく聞くけれど“静脈硬化”もあるの?

静脈も加齢などにより血管力が低下すると静脈硬化につながります。静脈の主な働きは、動脈によって全身に送り出された血液を心臓に戻し、体内の二酸化炭素や老廃物を肺や肝臓に運んで体外に排出することです。そのため、静脈の血管力が低下すると老廃物などが体外に排泄されにくくなります。そして、動脈硬化のような重篤な疾患ではありませんが、QOLの低下にもつながるうっ血やむくみを招きます。そしてもう1つ、女性に起こりやすいのが下肢静脈りゅうです。静脈の血管力の低下と共に、血液の逆流を防いでいる弁の機能が衰え、足(下肢)に血液がたまりやすい状態に。その血液の圧力で静脈が盛り上がり、コブになった状態が静脈瘤です。症状を改善・予防するには、ふくらはぎの筋肉を動かす運動をするとよいでしょう(Q6参照)。

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