冬本番!かぜの予防とセルフケア

マスクをして口元に手を置く女性 写真

かぜをこじらせないためには、初期症状の段階で体が発する小さなサインを見逃さず、市販薬を服用することです。かぜの症状を和らげるセルフケアを身につけ、免疫力を高めるライフスタイルを心がけましょう。

記事:2017年10月

濁川博子 先生

濁川博子 写真

にごりかわ・ひろこ 東京逓信病院感染症内科 主任医長
感染症一般、院内感染制御、不明熱を専門とする。同病院感染症内科にて、食事、睡眠、運動といった生活習慣にも配慮した治療を行う。感染症を克服した後、患者さんがより健康に暮らせる診療を目指している。日本内科学会認定内科医・指導医。日本感染症学会認定感染症専門医。ICD(インフェクションコントロールドクター:感染制御医)

Q1

かぜをひきにくいのはどんな人?

A. 免疫力が高い人はかぜをひきにくいといえます。

免疫力とは、細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入することを防いだり、体内にいる病原体を撃退したりしてくれる自己防御機能のことです。そのため、免疫力が高い人は、細菌やウイルスを寄せつけず、たとえ体の中に病原体が入ってきても十分に闘える力があるため、かぜをひきにくいのです。一方、免疫力が低い人は、細菌やウイルスが侵入しやすい上、退治する力も弱いため、かぜをひきやすくなります。

特別な免疫系の病気を抱えていない限り、生まれながらもっている免疫力に個人差はほとんどありません。しかし、ライフスタイルによって免疫力は高まったり、低下したりします。また、過剰なストレス、睡眠不足、運動不足、栄養が偏った食生活も免疫力を下げる要因に。実際に、ストレスを上手に解消しながら充実した毎日を送っている人は、ストレスが多い環境で暮らしている人よりも免疫力が高いといった研究報告もあります。

病原体とは?

病原体とは、細菌やウイルスなど、病気を招く原因の総称。細菌とウイルスは、大きさや構造、感染・増殖の仕方などが異なります。

インフルエンザやかぜの7〜8割はウイルス感染によるものが原因で、残りは溶連菌や肺炎球菌など、細菌感染が原因と考えられています。一般的にウイルス性のかぜの場合は、3〜4日くらいで症状が回復するのに対し、細菌性の病気の場合は症状が長引く傾向にあります。

また、治療法も異なります。一般的に知られている抗生物質は、細菌感染による病気には効きますが、ウイルス感染が原因のインフルエンザやかぜには効力を発揮しません。

ウイルスに対して細菌の大きさの違いは1000倍以上!大きい
Q2

症状が人によって様々なのはなぜ?

A. かぜウイルスの種類が非常に多く存在するためです。

かぜの原因となるウイルスは、少なくとも200種類以上あるといわれています。症状が人によって様々なのは、感染するウイルスが異なるためです。また、同じウイルスに感染したとしても、免疫力の強さと鼻やのどの粘膜の状態は、人それぞれ異なるため、症状の程度には個人差が生じます。そして、体の弱い部分にかぜの初期症状が出やすいといった傾向もあります。かぜの初期症状が出たら、十分に睡眠をとる、市販薬を服用するなど、早めのケアが大切です。

Q3

のどの痛みを和らげるには?

A. 病原体の増殖を防ぐことが大切。

のどの粘膜に病原体が付着すると炎症が起こり、のどがイガイガする、痛がゆいなどの症状が現れます。痛みを和らげるには、病原体の増殖を防ぎ、炎症を抑えることが必要です。

セルフケアとして、うがい薬や抗菌作用のある塩水や緑茶でうがいをする、唾液の分泌を促してくれるのどあめやトローチをなめることが有効です。唾液には、抗菌・抗ウイルス作用があるため、ウイルスの増殖を防いでくれます。また、唾液が出ることによって、のどの乾燥を防ぎ、病原体に感染しにくくなるといった予防効果も期待できます。

正しいうがいの仕方

口の中でブクブクする“口蓋型”うがいと、顔を上に向けてのどでガラガラする“咽頭型”うがいがあります。口蓋型うがいは、口の中の乾燥を防ぎ、食べ物の残りかすを洗い流す、咽頭型うがいはのどの乾燥を防ぎ、付着した病原体を洗い流す目的があります。かぜの予防やのどの痛みを和らげるには、両方のうがいを行うことがポイントです。

  • 口の中をゆすぐ女性イラスト

    口蓋型うがい

  • 口を開けてうがいをする女性イラスト

    咽頭型うがい