ちょっと高めから要注意 高血圧対策

血圧を測って悩み顔の男性

学びPoint

1.血圧値は、ちょっと高めから要注意

2.生活習慣の改善が第一。まずは食生活の見直しを

3.血圧を正しく測って、体調管理に役立てる

血圧を測る女性 イラスト

日本医療大学総長

島本和明 先生

島本和明 写真

しまもと・かずあき
1946年生まれ。71年札幌医科大学卒業。
同年、NTT東日本関東病院(旧関東逓信病院)内科にて研修後、72年札幌医科大学第二内科入局。その後、高血圧の研究のため米国サウス・カロライナ州チャールストンのMedical University of Carolina薬理学教室に留学。帰国後、札幌医科大学教授、同附属病院長、同大学学長などを経て、現職。

高血圧/ Profile

血圧値の分類は6段階

血圧の数値は6段階に分けられています。まずは、自分がどの段階にいるか確認しましょう。

血圧の低い方から、至適(してき)血圧、正常血圧、正常高値血圧、I度(軽症)高血圧、II度(中等度)高血圧、III度(重症)高血圧。
          高血圧への移行に注意:収縮期血圧130~139mmHg、拡張期血圧85~89mmHg。
          高血圧治療ガイドライン高血圧:収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上。
          ※家庭血圧(家で測定する血圧)では、収縮期血圧135mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上が高血圧。

高血圧危険度チェック

高血圧を招く生活をしていませんか。
チェックの数が多いほど高血圧になりやすいので、注意が必要です。

濃い味つけの物が好き

野菜や果物はあまり食べない

運動をほとんどしない

家族に高血圧の人がいる

ストレスがたまりやすい

お酒をたくさん飲む

たばこを吸う

血糖値が高いと指摘されたことがある

炒め物や揚げ物、肉の脂身など、脂っこい食べ物が好き

Q1

血圧ってどのようなもの?

A. 心臓から血液を送る際生じる圧力です

全身の臓器や組織に酸素と栄養を運ぶ役割を担う血液。心臓はポンプのように収縮と拡張を繰り返しながら、この血液を血管に送り出しています。その際に血液が血管の内側(血管壁)に与える圧力が「血圧」です。 血圧は、次の2つの数値で表されます。

●収縮期血圧(最高血圧、上の血圧)……心臓の収縮によって血液が全身に送り出される時の圧力。血管を押し広げることになり、血管壁にかかる圧力は最も強くなる。

●拡張期血圧(最低血圧、下の血圧)……収縮した心臓の中に血液が再び送り込まれ、心臓が拡張して元の大きさに戻る時の圧力。この時、心臓から血管への血液の送出はなく、大動脈にたまっている血液のみが血管に送り出されるため、血管壁にかかる圧力は最も弱くなる。

血圧値は、心臓が1回の収縮で送り出す血液の量と、血管の太さや血管の壁の硬さによって決まります。送り出す血液量が多く、血管が細く、血管壁が硬いほど血圧値は高くなります。

血圧のメカニズム

収縮期血圧

心臓から血液が全身に送り出される時のイラスト

心臓から血液が全身に送り出される時の血液の圧力。血管壁にかかる圧力は最も強くなる。

拡張期血圧

血液が再び心臓まで戻る時のイラスト

血液が再び心臓まで戻る時の圧力。血管壁にかかる圧力は最も弱くなる。

高齢者の血圧の特徴

  • 年齢と共に、収縮期血圧は高くなる傾向にあります。これは、加齢により血管が硬くなり、弾力性が失われていくことが原因です。また、弾力性が失われて血管が膨らまない分、大動脈にためられる血液は減り、拡張期血圧は低くなります。そのため高齢者は高血圧になりやすく、収縮期と拡張期の差が大きくなる特徴があります。

  • 血圧を測る高齢者イラスト
Q2

血圧が高いと体にどのような影響があるの?

A. 動脈硬化や心疾患のリスクを高めます

ホースに強い水圧がかかると劣化するように、血圧が高い状態が続くと血管は徐々に傷んでいきます。傷んだ血管は弾力性が失われて、血液が流れにくくなり、さらに強い圧力が必要になるという悪循環が生じます。このことにより、血管障害である動脈硬化が進行します。また、心臓も高い圧力で血液を送り出すことにより負担がかかり、異常が起こりやすくなります。

これらの要因により、高血圧は脳梗塞やくも膜下出血、心筋梗塞など、重大な病気を引き起こすリスクを高めます。

正常値は収縮期血圧が140mmHg未満かつ、拡張期血圧が90mmHg未満です。このどちらか、または両方の数値が慢性的に超える場合に高血圧と診断されます。

ただし家で測る場合は、病院などで測るよりも落ち着いた状態での計測であることから、低めに出る傾向があります。そのため、収縮期血圧135mmHg未満、拡張期血圧85mmHg未満を家庭血圧における正常値としています。

自覚症状がないまま進行する「沈黙の病」であることからも、日頃の血圧のチェックと早期治療が大切です。

高血圧は心疾患のリスクを高める

心臓や血管に負荷がかかっているイラスト

高血圧は、常に心臓や血管に負担がかかった状態。

矢印
心筋梗塞、動脈硬化、脳梗塞・くも膜下出血
Q3

血圧は正常範囲内であれば安心?

A. 正常高値血圧の人は注意しましょう

収縮期血圧130~139mmHg、または拡張期血圧85~89mmHgに当たる正常高値血圧は、これまで通りの生活を続けていると高血圧へと移行してしまう可能性が高い範囲。注意を促すために設定された領域です。たとえ高血圧に至らなくても、正常高値血圧の状態が長年続くと血管や心臓に負担がかかると共に加齢による影響も重なり、心血管疾患のリスクが高まります。下の表を見ると、正常血圧よりもさらに理想的な血圧値である至適血圧に比べ、動脈硬化は2.5倍、脳梗塞は3.1倍のリスクがあることが分かります。

正常高値血圧は、生活の改善により正常血圧に戻りやすい段階でもあります。正常範囲内であるからと放置をせずに、早めに生活習慣を見直しましょう(Q7、Q8参照)。

正常範囲の3段階における心血管疾患のリスクの比較

縦軸:心血管疾患累積発症リスク、横軸:追跡期間。
              正常高値(n=291)、正常血圧(n=365)、至適血圧(n=537)。
              年をおうごとに差が開いていく。

至適血圧を1.0とした場合の心血管疾患発症リスク(8年後)

血圧分類 心血管系の病気 動脈硬化 脳梗塞
至適血圧 1.0 1.0 1.0
正常血圧 1.5 1.1 1.8
正常高値 2.4 2.5 3.1

「端野・壮瞥町研究レビュー2007」より改変

血圧は時間帯や気分でも変化します

  • 血管の状態は、交感神経や副交感神経の働きによっても変化します。例えば、交感神経が優位になる昼間は、副交感神経が優位になる夜に比べて血管が活発に収縮しているため、血圧が1~2割高くなります。同様に、安静時と運動中、リラックス時と緊張時などでも変動します。普段、血圧が正常な人であれば、一時的な上昇は問題ありません。

  • 太陽と月のイラスト

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