定期検査で早期発見 糖尿病の合併症

学びPoint

1. 糖尿病合併症の主な原因はAエーGジーEイー
2. 過去に高血糖であれば、合併症になる可能性が高い
3. 合併症の予防と治療には定期検査が欠かせない

AGE牧田クリニック院長

牧田善二 先生

まきた・ぜんじ 1979年北海道大学医学部卒業。苫小牧市立病院などに勤務した後、米国・ロックフェラー大学で糖尿病合併症の原因であるAGEの研究を行う。帰国後、久留米大学医学部教授などを経て、03年AGE内科クリニック開設、08年AGE牧田クリニックを開設。日本糖尿病学会認定専門医。『糖尿病で死ぬ人、生きる人』(文藝春秋)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(同)など著書多数。

糖尿病の合併症 / Profile

糖尿病合併症の原因「AGE」とは

糖尿病になると様々な合併症が起こりますが、その原因となるのが「AGE(終末糖化産物)」です。AGEは血液中のブドウ糖がタンパク質と結びついたもので、一度できると消えることなく体に蓄積し、体内のタンパク質にダメージを与えます。人の体はほぼタンパク質でできているため、血糖値が高くその期間が長い人ほどAGEが大量につくられ、体中に様々な病気が起こります。

AGEが合併症を起こす流れ

Q1糖尿病が原因で起こる「三大合併症」って何?

A. 糖尿病神経障害、糖尿病もうまく症、糖尿病腎症です

高血糖が原因で、毛細血管が傷ついたり詰まったりして、糖尿病の人に起こりやすい次の3つを「三大合併症」といいます。

●糖尿病神経障害
毛細血管が傷ついて血流が滞ると、栄養や酸素が供給されず神経が傷つく。足のしびれなどが起こり、進行するとしゅようを招く。
●糖尿病網膜症
網膜の毛細血管が傷ついたり破れたりして、視力の低下や失明を招く。
●糖尿病腎症
腎臓の毛細血管が傷つくと血液中の老廃物を尿としてはいせつできなくなる。腎不全になると、腎臓の代わりとしてとうせき治療が必要になる。

糖尿病の合併症は、過去の高血糖によって体内に蓄積したAGEが原因となり、時間をかけて発症します。そのため、糖尿病になると、合併症を予防し進行を防ぐための継続治療が必要になります。これが“糖尿病にかかると治らない”ともいわれるゆえんです。

また合併症は初期症状がほとんど現れないため、進行を防ぐには定期検査による早期発見が必要です。

糖尿病の三大合併症

糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症

三大合併症の発症の目安

血糖値が高く、持続期間が長いほど合併症が現れやすい。糖尿病は正確な発症時期が分かりにくい病気のため、診断された時には合併症が進んでいる場合もある。

Q2糖尿病神経障害を早期に発見するには?

A. 日頃から足を観察し年に一度は検査をします

糖尿病神経障害が起こると、感覚・運動神経と自律神経に次の症状が現れます。

●感覚・運動神経障害
足のしびれや冷え・痛み、こむらがえりなどが起こる。進行すると感覚が低下するために傷などに気づきにくく、放置すると皮膚が深くえぐれる潰瘍や、組織が壊死する壊疽を招く恐れがある。
また、心筋こうそくなどが起こっても痛みが現れないため、突然死を来す場合もある。
●自律神経障害
立ちくらみ、排尿障害、下痢、便秘、発汗異常、勃起障害(EイーDディー)などが現れる。

糖尿病神経障害は、三大合併症の中でも最も早い段階で症状が現れますが、症状を軽視し受診が遅れがちです。年に一度は、「アキレスけん反射」や「振動覚」などの検査を受け、神経障害が疑われる場合は、足の動脈検査を受けましょう。

糖尿病神経障害の自覚症状

足のしびれや冷え・痛み・ふくらはぎの筋肉がつる・感覚低下・潰瘍や壊疽・立ちくらみ・排尿障害・下痢・便秘・発汗異常・勃起障害(ED)

早期発見のための検査

アキレス腱反射検査:ゴム製のハンマーでアキレス腱を軽く叩き、足の反射を診る。振動覚検査:弱い振動を足に当て、振動を感じている時間の長さなどを測定する。

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