体の中から健康チャージ 食習慣で体は変わる!

step4

消化管が大活躍!
食べた物で体がつくられる仕組み

食べ物に含まれる栄養素を、体に取り込む役割を果たしている消化管。
私たちの生命活動を支える消化管の働きを見てみましょう。

健康な体の土台は消化管の働きにあり!

消化管とは、口から食道を通り、胃、腸、肛門に至るまでの1本の道筋のことをいい、全長は約9メートルにもなります。

消化管の主な役割は、消化と吸収により、食べ物から栄養素を取り入れること。水分や塩分は直接血液の中に取り入れることができますが、炭水化物やタンパク質、脂質などは消化液などの力を借りて〝小さな物質〟に分解していく必要があります。例えば、タンパク質はアミノ酸に分解され、体に吸収されます。 

消化された栄養素は、主に小腸の内側にある血管を経由して肝臓に運ばれ、体を動かすエネルギー源や体をつくる原料となります。こうして食べた物が〝身になる〟のです。

消化管は口から食べ物を取り入れる性質上、常に外界の悪い菌とも戦わなければならないため、強い免疫組織を持っています。「つまり、体に栄養素を運ぶ消化管には体の病気を防ぐ役割もあるのです」と香川先生。

消化管の働きは、自律神経によってコントロールされています。例えば、食べ物を前に、視覚・味覚・嗅(きゅう)覚・聴覚などの刺激が脳に達すると、自律神経によって反射的に唾液が分泌されます。

自律神経系はストレスの影響を受けやすく、ストレスの多い状態が続くと、消化液の分泌や蠕動運動が抑制され、消化管の働きが低下します。それにより食欲不振や便秘、胃炎、過敏性腸症候群などの不調や病気を引き起こしやすくなります。

腸は神経細胞が多く存在するため、“第2の脳”といわれています
1.口、2.食道、3.胃、4.小腸、5.大腸、6.肛門

➊口

咀嚼(そしゃく)により食べ物を一次消化

唾液には消化液としての働きがある。「よくかんで食べよう」と言われるのは、食べ物を細かくするだけでなく、かむことで消化液である唾液が十分に分泌され、胃や腸での食べ物の消化・吸収を助けるため。

➋食道

蠕動(ぜんどう)運動で食べ物を胃へ

食道に入った食べ物は、青虫の動きのような蠕動運動によって、胃へ押し進められる。飲み込んだ食べ物が胃に届くまでの時間は数秒。

➌胃

胃液で食べ物を消化

胃は食べ物の一時貯蔵場所であると共に、分泌された胃液と胃壁の蠕動運動によって、食べ物を吸収しやすい形に加工・分解する器官。ストレスを受けると胃液や胃を保護する粘液の分泌に異変が起き、食欲不振や胃炎などを引き起こす。

➍小腸

内壁から栄養を吸収

小腸は全長6~7mの細く長い管で、上から順に十二指腸、空腸、回腸と続く。胃から送られた食べ物は、ここで膵(すい)臓からの膵液、肝臓からの胆汁(たんじゅう)、小腸液と混じり合って最終段階まで消化される。そして、小腸の内壁から栄養素が吸収され、肝臓に運ばれる。 肝臓で栄養素は体内で活用されやすい形に換わり、全身に送り出される。

➎大腸

栄養分の残りカスを処理

小腸で栄養分を取り除いた後の残りカスは大腸に運ばれる。大腸の役割は水分を吸収して便を形成すること。腸内には数百種、100兆個もの細菌が常在し、善玉菌優勢で腸内環境を整えている。この環境が乱れると便秘や免疫力の低下を引き起こす。

➏肛門

残りカスを排泄

消化管の最後は直腸とつながった肛門。直腸に排泄物がたまると大脳に刺激が伝えられ、排便反射によって便意をもよおし、便が排泄される。

腸は最大の免疫器官

腸には体中の全免疫系細胞の60%以上があり、体に侵入した有害な細菌やウイルスを排除する役割を持つ。腸の免疫機能を高めるためには、腸内細菌のバランスを正しく保つことが大切。食物繊維、ヨーグルトや納豆などの発酵食品は腸内の善玉菌を増やすのに有効である。

step5

ポイントを押さえていざ実践!
身につけたい食習慣

健康のためには「いつ」、「何を」、「どのように」食べるのがよいか、時間栄養学にかなった食習慣を身につけましょう。

規則正しい生活リズムが健康をつくるワケ

消化管の健康を損なうことは、体全体の健康を損なうこと。では、消化管を健康に保つためには、普段からどんなことを心がけたらよいのでしょうか。

ここで再び「時間栄養学」が登場します。時計遺伝子は小腸などの消化管や肝臓にも多く存在し、生活のリズムから食べ物が入ってくるのを予測。それを受けて消化管は消化酵素を分泌して食べ物を待ちます。

この時計遺伝子は規則正しい生活が大好き。毎日ほぼ同じ時間に、同じような食べ物が入ってくると消化管の働きもスムーズです。規則正しく食事を摂ることが大切なのはこのためです。

そして、時計遺伝子は食べる物でも働きが変わります。消化管の時計遺伝子にとって重要なのがタンパク質。約25時間周期の体内時計を毎朝リセットするのに不可欠です。香川先生おすすめの朝食は、アメリカンブレックファスト。「卵にベーコン、パン、サラダと、必要な栄養素がバランスよく摂れます。日本人の場合は量を半分程度に減らして食べましょう」。

もう1つのポイントとして、血糖値を急上昇させないものを選ぶことも大切。指標となるのが、「GI(グリセミック・インデックス)値」。食べ物によって血糖値を上昇させるスピードに違いがあり、それを数値化したものです。

また、血糖値の急上昇を防ぐ食べ方として、野菜や海藻など、食物繊維の多い食材を先に食べるのも有効です。

時計遺伝子を味方につければ、無理せず好きな物が食べられます
いつ When

タイミング・時間

  • 時間通りに来た! 待ってるのに来ないよ~

    朝食を摂り、3食規則正しく

    朝食を食べないと生体リズムが乱れ、肥満の原因に。消化管は1日3食、食べ物が来るのを予測して働いている。だからこそ生活リズムを整え、規則正しく食事を摂ることが大切。

  • 3時のおやつ

    脂肪をためにくいのは15時

    時間栄養学的に、15時頃は糖分を摂っても脂肪になりにくい。また、塩分は夕方に摂れば体にたまりにくい。食べる時間を考慮することで、体は健康に近づく。

何を What

摂るべき栄養素・食品

  • 朝食にハムや卵

    朝食にはタンパク質が必須!

    時計遺伝子は約25時間周期。放置しておくと毎日1時間ずつズレが生じる。朝食に摂るタンパク質は時計遺伝子のリセットボタン。生体リズムを整えるのに重要な栄養素。

  • そばを注文する男性 イラスト

    GI値の低い食品でゆっくり吸収

    血糖を急激に上げる食事は脂肪を増やし、善玉コレステロールを減らしてしまう。食品の血糖上昇指数「GI値」が低い食品を選ぼう。

    高GI食品(70以上)

    精白米・食パン・うどん・コーンフレーク・もち・じゃがいも・とうもろこし・人参・パイナップル・すいか・ドーナツ・せんべい

    低GI食品(55以下)

    玄米・全粒粉パン・そば・春雨・大豆・葉野菜・りんご・いちご・肉類・魚全般・チーズ・ヨーグルト

いつ HOW

食べ方のコツ

  • メインディッシュの前にサラダを食べる イラスト

    「野菜から先」に食べる

    食物繊維は吸収に時間がかかり、血糖値の上昇を緩やかにする。食事は「野菜から先」を心がけよう。血糖値の急上昇を防ぐことは、糖尿病の予防にもつながる。

  • 料理のバランスを考える イラスト

    様々な食材をバランスよく

    全ての栄養素は人間の体をつくるもとになっている。また、栄養バランスが取れた食事でないと、体の中の時計遺伝子はしっかり働いてくれない。

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