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生活習慣病の予防・改善に役立つ新しい栄養学講座

日本人の生活習慣病の予防と改善にその効果が期待される今話題の「時間栄養学」など、栄養学の最新情報をご紹介します。

健康な食習慣は遺伝子の働きがカギ

次々と新しい研究・発表が行われている栄養学の世界。単にバランスよく栄養を摂取するだけでは解決できないことがあることも分かってきました。そんな中、今最も注目されているのが「時間栄養学」。女子栄養大学副学長、栄養科学研究所長の香川靖雄先生はこの分野の第一人者です。

「日本人のエネルギー摂取量は、統計上のピークである1970年の2210キロカロリーから年々減少傾向にもかかわらず、糖尿病は予備群も含め年々増加傾向。摂取カロリーは減っているのに生活習慣病が増えている。この矛盾を解くカギとなるのが時間栄養学なのです」。

厚生労働省「健康日本21」の調べによれば、日本人は男女共に朝食の欠食率が年々高まっており、夕食の時間も21時以降という人が増えています。生活習慣病を引き起こす原因は、ここにあると考えられます。

朝食を欠食すると、時計遺伝子(コラム参照)が飢餓の危険を感じ、身体活動を低下させてエネルギーを脂肪に換え、蓄えてしまいます。アメリカの研究では、朝食を食べない人は、食べる人に比べて5倍も肥満になりやすいことが分かっています。また、夕食の時間が遅い場合も、脂肪蓄積にかかわる時計遺伝子の働きが影響することで、太りやすくなります。

時計遺伝子とは?

私たちの体内時計をコントロールしているのが「時計遺伝子」。時間を感知する遺伝子で、脳の視床下部(ししょうかぶ)をはじめ全身の細胞に存在する。なぜか1日が約25時間でセットされている体内時計のリセットに必要なのが、朝の日差しと朝食。特に、消化管や肝臓にある時計遺伝子のリセットには朝食を摂ることが必須。また、20種類以上ある時計遺伝子産物の中には、体内の脂肪蓄積にかかわる遺伝子産物があり、夜10時から午前2時の間に増える性質がある。夜遅くに食べると太りやすいといわれる理由は、この時計遺伝子の性質によるものである。

栄養に関する注目キーワード

  • 「時間栄養学」

    私たちの体は時計遺伝子の働きによってコントロールされ、時間帯によって分泌されるホルモンの種類や量、栄養素の吸収率などが異なる。時間栄養学ではこの生体リズムを生かし、何を食べるかだけでなく、食べる時間やタイミングを意識することで、生活習慣病の予防や体づくりに活用できる。

  • 決まった時間に食事する イラスト
  • 「遺伝子対応栄養学」

    遺伝子の中には、ビタミンや葉酸(ようさん)を代謝しにくくするタイプや、肥満になりやすくするタイプがあり、生活習慣病には遺伝が関係していることが分かっている。生活習慣病の予防には、このような遺伝子の個人差にも対応できる「遺伝子対応栄養学」の考え方が必要となってくる。

  • 同じものを食べても、吸収や代謝には個人差がある イラスト
  • 栄養素の「トリアージ説」

    災害医療で緊急の患者から優先的に治療するための選別法を「トリアージ」という。体内の栄養代謝でもトリアージは行われている。ビタミンやミネラルなどが不足すると、当面の生存用に優先的に使われ、長期的な健康のために必要な分は後回しに。その結果、遺伝子を保護するためのビタミン、ミネラルが不足し、長い年月をかけて慢性疾患(しっかん)の発症につながると考えられている。

  • 緊急で必要になると長期の健康に必要な栄養が使われる イラスト

なぜ栄養が必要?

  • タンパク質

    筋肉や血、髪、爪など、私たちの体をつくる栄養素。ゆえに不足すると、体の成長に影響し、老化を早めることにもつながる。

  • 肉、卵 イラスト

摂取のPOINT

20代以上では年代を問わず1日に60~80gのタンパク質が必要。動物性のタンパク質は栄養価が高く、植物性では大豆が優秀。タンパク質といってもその種類によって栄養価は異なるので、複数の食品から摂取する必要がある。

  • ビタミン

    微量ながらも人の健康に不可欠な栄養素。体内では合成できず、食べ物からしか摂取できない。

  • レモン、いちご イラスト

摂取のPOINT

「水溶性ビタミン」であるビタミンB、Cは体外に排出されてしまうため、毎日の食事で十分に摂ることが大事。「脂溶性ビタミン」のビタミンA、D、E、Kは体内に蓄積するため、サプリメントなどを摂取する場合は、過剰摂取にならないよう注意が必要。

  • 炭水化物(糖質)

    脳や体を動かす大切なエネルギー源。体内への吸収が早く、すぐにエネルギーとなるが、すぐに脂肪にもなりやすい。

  • ごはん、パン イラスト

摂取のPOINT

血糖値の急上昇を防ぐためにも、主食の米は、GI値の低い玄米や雑穀米がおすすめ。食物繊維は消化・吸収されない炭水化物で、大腸内の有用菌を増やし、腸の働きを活発にする。血中コレステロールを減らす働きもあり、生活習慣病の予防に有効とされる。

  • ミネラル

    体の機能を維持・調節するのが役割。骨や歯をつくる成分になる、神経や筋肉の働きを調節するなどの役割がある。

  • 海藻、牛乳 イラスト

摂取のPOINT

過剰摂取には注意が必要。大切なのは体に少しずつ蓄積していくこと。例えば骨をつくるカルシウムは、成長期から毎日牛乳を飲むことで、大人になった時の骨の健康につながる。

  • 脂質

    体のエネルギー源となる。体脂肪となり体の蓄積エネルギーにも。体温維持をはじめ、神経組織や細胞膜、ホルモンをつくる材料としても重要。

  • バター、油 イラスト

摂取のPOINT

脂質を構成する脂肪酸は種類によって働きが異なる。1種類に偏らず、肉や魚、植物などから複数の脂肪酸を摂ることが大切。植物オイルやナッツ類、魚油などの質のよい油を。

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