飲み過ぎは脂肪蓄積のもと! 肝臓とお酒の関係

学びPoint

1. 肝臓のトラブルは症状なく進行するため、検査が重要
2. アルコールの過剰摂取は、まず脂肪肝を招く
3. 肝臓に負担をかけない酒の飲み方を知る

東海大学医学部教授
同大学医学部付属東京病院病院長
検診センター長

西﨑泰弘 先生

にしざき・やすひろ 1986年東海大学医学部卒業。慶應義塾大学医学部内科系大学院、同大学病院助手、UCLAリサーチフェローなどを経て、2013年東海大学医学部教授。専門は消化器肝臓病学、予防医学(抗加齢医学、総合健診、産業保健)。日本肝臓学会専門医・指導医、日本消化器病学会評議員・専門医・指導医、日本アルコール医学生物学研究会会員。

肝臓とお酒/ Profile

肝臓の役割

肝臓は食べ物から得た栄養分を貯蔵したり、アルコールや薬剤、不要な老廃物を分解・解毒したり、胆汁という物質を分泌し、脂質の消化を助けるなど、生命を維持する重要な働きを担っています。重さは成人で約1.2kg。内臓の中では最大の臓器です。

Q1酒の飲み過ぎが肝臓によくないのはなぜ?

A. 有害物質が肝臓を傷つけ脂肪蓄積を促すため

体内にアルコールが入ると、肝臓で酵素が働いて「アセトアルデヒド」という物質に分解されます。アセトアルデヒドは人体に有害な物質ですが、最終的には水と二酸化炭素にまで分解され、体外に排出されます。しかし、過剰に飲酒すると、アセトアルデヒドが多量につくられることにより、悪影響を及ぼします。

飲み過ぎで頭痛や吐き気が起こるのは、アセトアルデヒドの強い毒性が原因。アセトアルデヒドは活性酸素を介して肝細胞を傷つけ、さらには脂肪の分解を抑制し、肝臓に中性脂肪の蓄積を促します。そのため、長期の過剰飲酒は、まず脂肪肝を招き、多くのトラブルにつながります。

特に肥満傾向にある人は、過剰飲酒で脂肪を蓄積しやすいため、飲酒量の見直しが必要です。

肝臓に脂肪がたまりやすい人

Q2飲み過ぎが原因となる肝臓トラブルとは?

A. 脂肪肝、アルコール性肝線維症、肝硬変を招きます

過剰な飲酒でまず問題になるのは、中性脂肪が肝臓に蓄積する脂肪肝です。この脂肪肝が慢性的に続いた状態でアルコールを大量に摂取すると、肝細胞に炎症が広がったり、アルコールを分解する際に生じる活性酸素などが細胞を破壊し、次の様な段階を経て、深刻な肝障害へと進みます。

●アルコール性脂肪肝
中性脂肪が過剰にたまり、肝臓が全体的に肥大する。進行すると疲れやすいなどの症状が現れる。
●アルコール性肝線維症
脂肪肝を改善せずに飲酒を続けると、広範囲にわたって細胞に炎症が起こり、線維が沈着する。疲労感、体重減少、食欲不振などを引き起こす。
●肝硬変
炎症が持続すると線維の沈着がさらに増え、肝循環の悪化が進む。進行すると黄疸、腹水などが発生する。肝がんのリスクも格段に高くなる。

肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、トラブルが起こっていても、進行するまでは特に目立った症状が現れません。健康診断で行う血液検査の結果から、肝臓に異常があるかどうかが分かります。肝臓トラブルを予防するためにも、検査をきちんと受けておくことが大切です。

沈黙のまま進行する肝臓トラブル

過剰な飲酒を続けると、死に至る疾患(しっかん)にまで進行する。

血液検査で分かる肝臓の異常

肝臓に異常があると、代謝にかかわる酵素や毒素が血液に漏れ出てくるため、血液で肝機能のチェックができる。