体の中から健康に! 腸内環境を整える
腸の働きを徹底解明!
腸が正常に本来の機能を発揮することは、心身の健康にとって重要となります。
腸の健康は全身の健康に影響するのです。
腸の働きと役割
人体で最大の免疫器官
腸には体内の免疫細胞の60%以上が存在。腸内環境の悪化は免疫力の低下につながり、かぜや病気になりやすい体に。
腸は“第二の脳”
腸には脳に次ぐ多くの神経細胞が存在し、感情にも深くかかわっているため、「第二の脳」といわれている。また、脳との関係も密接。腸の不調は脳に反映され、脳に受けたストレスは腸に反映される。このネットワークを「腸脳相関(ちょうのうそうかん)」という。
精神的ストレスに
つながる
腸の不調に
つながる
自律神経との関係
腸の働きには、自律神経が大きくかかわっている。活動神経である「交感神経」が優位な時は、蠕動運動は停滞。一方、リラックス神経である「副交感神経」が優位な時は、蠕動運動は活発になる。蠕動運動がしっかり起こっていると腸内の不要な物が次々と押し出され、腸内環境にも好影響をもたらす。
腸の働きが低下すると……
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におい
便秘で腸内にたまった有毒ガス(インドールやスカトールなど)が血液中に吸収される。有毒ガスは体内を巡り毛穴などから放出されることも。
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かぜを
ひきやすい腸内環境が悪くなると、腸内に存在する免疫細胞に影響を及ぼし、免疫力が低下。かぜをひきやすくなったり、病気になりやすくなる。
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肥満
腸内環境が悪いと、脂肪燃焼に必要なビタミンやミネラルなどの栄養素が吸収できず、脂肪燃焼効率が悪くなる。代謝も悪くなり、むくみやすい体に。
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肌荒れ
腸内環境が悪くなり、腸からの栄養分の吸収などに支障を来すと、肌にも栄養が巡らなくなる。
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生活
習慣病腸内細菌はインスリンの分泌や尿酸のコントロールにもかかわっているため、糖尿病や高血圧にも影響することが分かってきている。
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便秘・下痢
腸内環境の悪化や腸の働きの低下により、蠕動運動に支障を来すと、便秘と下痢を繰り返すケースも。
腸の健康が大切な理由はここにあった!
腸が行う消化・吸収・排泄の仕組みをおさらいしてみましょう。胃から入ってきた食べ物は、まず小腸にやってきます。ここで本格的な消化作業を行い、小腸内壁から栄養分を吸収します。その栄養分は肝臓から血液に乗って全身に行きわたります。一方、大腸では、栄養分の残りかすを腸内細菌と混ぜ合わせて便を形成し、体外に排泄しています。
「体を動かしたり、考えたりできるのは、全身の細胞に栄養が行きわたってこそなんです。その栄養を吸収しているのが小腸。腸の働きが悪いと全身の細胞に栄養が行き届かなかったり、逆に腸にたまった老廃物が全身を巡ってしまったりし、冷えや疲れ、肩こり、肌荒れ、肥満など、思わぬ不調にもつながってしまいます」と小林先生。
近年では腸が体内免疫に最もかかわる器官であることや、うつなどの心の健康に影響するセロトニンの分泌(ぶんぴつ)を行っていることなど、腸の意外な働きについても分かり始め、改めて腸の健康が注目されています。
また、腸は生活習慣病にも影響することが分かってきています。インスリンの分泌を刺激する「インクレチン」という物質をつくっているのが腸内細菌。また、尿酸のコントロールにも腸内細菌がかかわっているとされ、糖尿病をはじめとする様々な生活習慣病の改善に、腸の健康が注目されているのです。腸内細菌の世界は未知の部分もまだまだ多く、今後も新たな発見があるものと考えられています。
過敏性腸症候群の裏に便秘!?
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過敏性腸症候群は20代の男性を中心として、近年増え続けている疾患。ストレスや緊張を感じるとお腹が痛くなったり、下痢になったりしてしまうというもの。この疾患は下痢の症状にばかり意識がいってしまいがちだが、実は便秘的な要素が隠れている場合も。硬い便が腸に詰まっていると、せき止めていた便が抜けた時に、その後ろに控えていた水分吸収の不完全な便が下痢のように出てしまう。この場合は、便秘を改善することが先決とされる。
ストレスに負けない腸に
腸はストレスの影響を受けやすい器官でもあります。
腸の働きが活発になる副交感神経を意識した生活で、腸を健やかに整えましょう。
こんなことも!?
腸にストレスを与える意外な原因
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季節や気候の変化
曇天の続く天候などはストレスを招きやすいといわれる。また、急な温度の変化、特に急激に寒くなる時は要注意。
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深夜のゲームやパソコン
就寝直前までゲームやパソコン三昧。夜なのに交感神経優位の状態を続けていると、腸の活動を阻害してしまう。
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排便日のチェック
便秘を心配し、いつ排便したかを気にし過ぎると、それがかえってストレスとなり、排便に悪影響を与える場合も。
夕方以降の過ごし方が腸の健康を守るカギ
現代人は様々なストレスにさらされながら生活しています。仕事や人間関係から生まれる精神的なストレスの他、低気圧などの気候や季節の変化などの環境的な要因からも無自覚にストレスを受けています。こうしたストレスは、自律神経のバランスを崩し、腸の健康を損ねます。
自律神経は時間帯によってバランスが変わります。体の自然な働きとしては、日中には活動神経である交感神経が優位になり、夕方からはリラックス神経である副交感神経が優位になります。腸の健康を守る上では、特に夕方以降の過ごし方が大切です。意識してリラックスし、副交感神経を優位に。すると、蠕動運動が活発になり、翌朝のスムーズな排便につながります。
「現代の人は寝る寸前までネットをしていたり、夜遅くまで明るい環境の中にいたりすることが多く、交感神経から副交感神経への切り替えがうまくできていない人が多いですね」と小林先生。便秘や不調を訴える患者に共通するのは、緊張状態が続き、交感神経が優位になり過ぎていることだと言います。
「起床時は、水を1杯飲んで胃と結腸に反射を起こす。また、朝日を浴び、朝食を食べることで体内時計を目覚めさせる。こうした規則正しい生活が自律神経を整えるのに有効なのです」。
ストレスから腸を守るカギは、自律神経を意識した生活にあるといえそうです。
自律神経を味方に! 夜と朝の健康習慣
夜はリラックスして過ごし、安眠を心がける。それによりリラックス神経である副交感神経の働きが優位になり、腸の活動が活発に。このことが、翌朝のスムーズな排便につながる。
夕方以降に軽い運動をすると、心のバランスを整える作用のある神経伝達物質のセロトニンを分泌。よい眠りにつながる。下半身を意識したウォーキングで腸にもよい効果が。
野菜を中心とした軽めの夕食にすることで胃腸の負担を減らし、消化・吸収の働きをよくする。朝、お腹がすいて起きるくらいの量がベスト。
副交感神経は夜の0時頃に最も高まります。腸の活動が1日で1番活発になる時間でもある0時までの就寝を心がけ、快便の朝を迎えよう!
排便タイムを
朝起きたばかりはまだ副交感神経が優位。交感神経に切り替わる前に腸の働きを促して排便し、すっきりとした気分で1日をスタート!
起きがけの1杯の水で胃と結腸に反射を起こし、腸に刺激を与える。水は1日トータルで1~2Lは摂取したい。
朝食は腸の蠕動運動を促して、便意を起こす大切なスイッチに。少量でもよいので何かしら口にするように。
たとえ便意を感じなくてもトイレに行く習慣を。そのためにも朝は少しだけ早く起き、時間にゆとりを持とう。