健康な毛髪を保つ 冬の頭皮ケア

学びPoint
1.頭皮の健康は毛髪に影響する
2.冬は頭皮も乾燥しやすく
頭皮トラブルが起こりやすい
3.脱け毛ケアには発毛剤の使用も一案

天羽 康之 先生

あもう・やすゆき 北里大学医学部皮膚科学主任教授
1996年北里大学医学部卒業。同大学医学部皮膚科学教室助手、カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部外科学教室、北里大学医学部皮膚科学教室診療講師、同大学専任講師などを経て14年より現職。日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・指導医、毛髪科学研究会世話人など。
毛髪と頭皮/ Profile
毛髪は皮膚の一部が変形したもので、頭皮内部でつくられ、成長していきます。頭皮から分泌される皮脂は徐々に毛髪に広がり、乾燥や刺激から守る天然のコーティング剤としての役割を果たしています。

毛髪の80~90%が成長期といわれる段階にあり、日々伸長している。
毛髪量は個人差があるが、日本人の場合、成人の毛髪量は平均10万本前後といわれている。
1日に抜ける毛髪量は60本ほど。多い時は100本近く抜けることもある。
頭皮のケアはどうして大切なの?
A. 頭皮の状態が毛髪にも影響するためです
毛髪は頭皮表面の奥深くでつくられ、成長していくので、頭皮はいわば畑のようなもの。畑が荒れていると、丈夫で健康な毛髪が育ちにくくなる他、生えても頭皮の傷みが原因で抜けてしまうこともあります。このように、頭皮の状態は毛髪にも大きな影響を与えます。
頭皮内部の「バルジ」という領域には、毛髪のもとになる毛包幹細胞があります。毛包幹細胞が毛髪の根っこにある「毛球部」に供給されると毛母細胞になり、毛細血管の血流から栄養分を取り込んで、細胞分裂を起こします。この細胞分裂をコントロールしているのが、毛球部の奥にある毛乳頭といわれる所です。こうして分裂した毛母細胞から新しい毛髪が育ち、頭皮の外へと伸びていきます。
頭皮と毛髪は密接な関係にあるため、健康な毛髪を保つためにも頭皮環境をよい状態に保つことが大切になります。
頭皮と毛髪の構造

毛髪が成長するメカニズム


冬の頭皮はどんな状態?
A. かゆみや炎症が起こりやすい状態です
気温が低下し空気が乾燥する冬は、頭皮も乾燥しやすくなります。乾燥が進むと、次のような頭皮トラブルが起こりやすくなります。
●かゆみや炎症……乾燥によって頭皮のバリア機能が低下する。すると、外部からの刺激にさらされやすくなり、かゆみや炎症が起こる。
●フケが増える……乾燥などによって頭皮環境が悪くなると、ダメージを受けた皮膚を早く修復しようと新陳代謝のサイクルが乱れる。このため、本来はがれ落ちるべきでない頭皮が大きな塊のフケとなって落ちるようになる。
かゆいからといって頭をかくと頭皮が傷ついてさらに悪化してしまうので、かかないように気をつけましょう。
また、フケは古くなった皮膚の角質細胞で誰にでも生じるものですが、大きな塊のフケや湿っていてこびりついているフケが多い場合は、頭皮の健康が損なわれている状態といえます。
乾燥による頭皮トラブル
かゆみがある
炎症が起こる
フケが増える
脂漏性皮膚炎ってなに?
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頭皮が荒れていたり、余分な皮脂や汚れがたまっていたりすると、もともと頭皮にいる常在菌が繁殖しやすくなり、湿疹を伴う脂漏性皮膚炎の原因になります。頭皮が荒れていると、その部分の毛髪が抜けてしまうこともあります。脂漏性皮膚炎は頭皮ケアだけでは改善しないので、ひどいかゆみや炎症が続く場合、湿疹が見られる場合は医療機関を受診し、治療を受けてください。
頭皮トラブルを改善するには?
A. 乾燥を防ぎ、頭皮を清潔に保ちましょう
フケの増加やかゆみ、炎症を改善するには、まず頭皮を清潔に保つことが大切です。頭皮をよい状態に保つためにも、正しい洗髪法を身につけましょう(下イラスト参照)。
毛髪の汚れが気になるからといって洗い過ぎるのは禁物です。頭皮や毛髪を覆っている皮脂が減り過ぎて、頭皮の乾燥をさらに進行させてしまうからです。また、取り去られた皮脂を補おうと分泌が過剰になってしまう場合もあるので、頭皮の状態をよく見ながら洗髪回数を調整するとよいでしょう。
乾燥が気になる場合は、洗浄力が弱いシャンプーに変える、洗髪後にローションなどで保湿するといった対策も有効です。
正しい洗髪法
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ぬるま湯で予備洗いし、ほこりや汚れを落とす。
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手のひらに適量のシャンプーをとる。爪を立てず指の腹で優しく頭皮を持ち上げるように洗う。
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泡をしっかり洗い流す。
リンスやトリートメントの役割は?
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リンスやコンディショナーは毛髪の表面に保護膜をつくって毛髪を滑らかにし、トリーメントには乾燥などによって傷んだ毛髪に栄養分や水分を与えて内部から修復させる働きがあります。フケやかゆみを防ぐ成分を配合した製品もあるので、上手に活用しましょう。