暑さに負けない!家族の健康管理

学びPoint
1.夏の不調のシグナルを知り、適切な対処を習得する
2.高齢者、子どもが夏に弱い理由を知る
3.夏の栄養管理のコツを学ぶ

大阪国際大学人間科学部スポーツ行動学科教授
井上 芳光 先生

いのうえ・よしみつ
1978年、大阪教育大学教育学部卒業。医学博士。神戸大学医学部助教授、大阪国際女子大学人間科学部教授などを経て現職。子どもや高齢者の熱中症予防策の構築も研究テーマとしている。日本生理人類学会理事、日本生気象学会幹事などを務める。環境省『熱中症環境保健マニュアル』編集委員。
夏バテ、熱中症 / Profile
夏バテ
夏バテが起こると自律神経が失調し、心身共に様々な不調が出ます。下記の1つでも当てはまる場合は、夏バテの可能性あり。
夏バテの症状チェック
- 全身の疲労感
- 体がだるい
- 無気力になる
- イライラする
- 熱っぽい
- 胃もたれ、食欲不振
- 下痢、便秘
- 過度な体重減少
熱中症
症状の重さによって、以下のように3つに分類されます。熱中症と疑われる症状が見られた場合、適切な処置を行わないと生命にかかわる場合もありますので、重症度に合わせた正しい処置を行いましょう。⇒対処方法は、Q8を参照
熱中症の症状チェック
重症度Ⅰ
- 手足がしびれる
- 立ちくらみ、めまい
- こむら返り
(ふくらはぎなどの筋肉のけいれん) - 気分が悪い、ぼーっとする
重症度Ⅱ
- 吐き気(はきけ)、嘔吐(おうと)
- 頭痛
- だるい
- 意識が何となくおかしい
重症度Ⅲ
※すぐに救急隊の要請が必要
- 過度な体温上昇
- 真っすぐに歩けない
- 呼びかけに対して返事が不明確、意識がない
- けいれん

人はどうやって体温を調節しているの?
A. 体温調節システムが働き、過剰な熱は放出されます
人には熱に弱い脳や体を守り、深部体温(体の内側の温度)を適温である約37度に保つ、体温調節システムが備わっています。
体の深部体温が運動などで上昇したり、皮膚の温度センサーが暑さを感知すると、その情報は脳の視床下部にある体温調節中枢に伝わります。すると、体温調節中枢は自律神経を通じて指令を出し、次の方法で熱を体の外に放散します。
●皮膚から熱を放散……まず、皮膚の血管を拡張して血液を皮膚により多く運搬し、体表面の温度を上げて体の外に過剰な熱を放散する(乾性熱放散)。
●発汗……外の気温が高く、皮膚からの熱の放散が十分でない場合に、特に重要となる。自律神経(交感神経)からアセチルコリンという神経伝達物質が放出され、汗腺を刺激。汗腺から出た汗が蒸発するときの気化熱によって熱が放散される(湿性熱放散)。
2つの体温調節システム


夏バテが起こる原因は?
A. 暑さによる自律神経の乱れや栄養不足など
Q1の通り、人の体は元来、環境に対する適応力をもっています。ところが、季節の変わり目や冷房などの影響により適応力を超えた寒暖差が生じたり、猛暑が続くと、体のバランスを整える自律神経の働きが乱れます。すると、体温調節機能が乱れ、胃もたれや食欲不振、だるさなど様々な不調を引き起こします。
そのほか、夏バテが起きるメカニズムには暑さが原因となる、次のケースが考えられます。
●発汗……暑さによって多量の汗をかくと水分やビタミン、ミネラル(塩分など)が不足し、疲労感やめまいなどを起こす。
●水分の過剰摂取……水分を摂り過ぎると胃液が薄まり、胃の機能が低下。すると、食欲不振により栄養不足が生じ、だるさを感じる。
●寝苦しさによる睡眠不足……暑さによりぐっすりと眠れずに翌日に疲れが残る。
夏バテを起こす主な原因
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過度な温度差による自律神経の乱れ
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発汗によるビタミン、ミネラル不足
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発汗による水分不足
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水分の摂り過ぎによる胃腸の衰弱
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寝苦しさによる睡眠不足