体の中から健康チャージ 食習慣で体は変わる!

私たちの体は食べた物でつくられ、動いています。体に必要な栄養素をしっかり摂り、正しい食習慣で病気を寄せつけない体に。健康は、毎日の食習慣からつくられるのです。
女子栄養大学副学長 栄養科学研究所長
香川 靖雄 先生

かがわ・やすお 東京大学医学部医学科卒業後、同大学院生物系研究科博士課程修了。医学博士。日野原重明先生の臨床現場での指導のもと、聖路加国際病院医師実地修練。東京大学医学部生化学助手、信州大学医学部生化学教授、米国コーネル大学生化学分子生物学客員教授などを経て、1998年女子栄養大学教授、自治医科大学名誉教授に。99年より女子栄養大学副学長、01年より栄養科学研究所長。生化学研究において紫綬褒章、教育・研究において瑞宝中緩章を受章。

食事や栄養の理解度チェック
次のうち、間違っているものはどれでしょう?
- 若い頃の食習慣の乱れは、健康にはさほど影響しない。
- 炭水化物は摂り過ぎても脂肪にはならない。
- 高齢になったらタンパク質は控えめにしたほうがよい。
- 各栄養素の必要量に個人差はない。
- 食べ物の栄養を吸収するのは胃である。
- 消化管の働きはストレスとは直接関係がない。
- 日本における生活習慣病の増加は、カロリーの摂り過ぎだけが原因。
- 食事は不規則でも、運動していれば体は健康だ。
- 朝食は食べないほうが健康によい。
- 食べる総量が同じなら、何から食べても体に変化はない。



年代別に見る
気をつけたい食習慣
年齢を重ねるごとに体は変化し、生活環境も変わっていきます。
それにより考えられる食習慣の傾向を知っておきましょう。
生活習慣病は全ての年代に関係していることも分かります。
10代
男性は15~17歳、女性は12~14歳が一生の中で最もエネルギーを必要とする。体や精神の発達、生活習慣の形成にとっても大切な時期。最近は朝食を食べない若者も増え、それが活力や体力の低下につながっているとも。この時期は特に、体の組織をつくるタンパク質、骨や歯をつくるカルシウムの不足に気をつけたい。
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朝食を食べない習慣は10代の頃から始まるケースが多い。
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無理な食事制限は体に必要なタンパク質やカルシウム、鉄、ビタミンを不足させ、その後の健康にもかかわる問題に。
20~30代
社会人となって生活が不規則になり、外食や飲酒の機会が増えることで、栄養バランスが崩れやすい。朝食欠食率は20代が最も高い。炭水化物や脂肪は摂り過ぎになる一方で、ビタミンやミネラル、食物繊維の摂取機会が減る傾向に。エネルギーの過剰摂取が問題になり始めるこの頃から、生活習慣病予防への心がけを。
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仕事帰りの外食や飲酒は、栄養の偏りや過剰摂取、メタボリックシンドロームにつながるのでほどほどに。
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仕事や家事、育児のストレスから過食に陥るケースも。ストレス管理も大切。
40~50代
仕事やプライベートでストレスを抱えやすい年代。老眼が始まるなど体の機能の一部で老化現象も見られ、栄養面では生活習慣病の予防が大きな課題に。食物繊維、カルシウム、カリウムの摂取を増やすよう心がけ、一方で、コレステロールや塩分の摂取は控える。60代以降の健康はこの時期の食生活によって決まる。
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40~74歳の男性は、予備群も含め2人に1人がメタボリックシンドローム。
更年期の女性
閉経前後10年間の更年期はホルモンバランスが乱れ、イライラ感からのやけ食いなど、食生活も乱れやすい。大豆や大豆製品から摂れる大豆イソフラボンは、女性ホルモンと似た作用を持ち、更年期症状の改善に有効。

60代以上
活動度や消化機能に応じた栄養摂取を心がける時期。かむ力や消化能力の衰えから軟らかい食べ物に偏りがちだが、タンパク質不足は老化現象を早めるので心がけて摂取を。カルシウムの吸収を促し、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の予防にも役立つのがビタミンD。高齢者は日光浴によるビタミンD産生能が衰えるため、食事でしっかり摂取を。
ビタミンDが豊富な食材……カツオやサケなどの魚類、干ししいたけ、しめじなど。
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高齢者の食事量は個人差が大きい。食べる量が少ないと、栄養不足を引き起こす。
閉経後の女性
閉経後は女性ホルモンの分泌(ぶんぴつ)量が激減。女性ホルモンが抑制していた悪玉コレステロールや中性脂肪が増えやすくなり、内臓脂肪がつきやすくなる。メタボリックシンドロームのリスクが高まり、生活習慣病の発生率も急激に上がる。
