食生活を見直す 中性脂肪・体脂肪対策

学びPoint
1.脂肪の蓄積が招く体への影響を知る
2.食生活を見直すことが大切
3.トクホを活用するのも一案

公益財団法人結核予防会 総合健診推進センター 所長
宮崎 滋 先生

みやざき・しげる
1971年東京医科歯科大学医学部卒業。医学博士。
糖尿病、肥満症、メタボリックシンドロームの治療に従事。東京医科歯科大学医学部臨床教授、東京逓信病院外来統括部長・内科部長・副院長などを経て15年より現職。日本内科学会認定医・指導医および、日本肥満学会副理事長・理事など。編著書は『ダイエットの方程式』(主婦と生活社)、『肥満症教室』(新興医学出版社)など多数。
脂肪がたまる仕組みとは?
食事で摂ったエネルギーが消費されずに余ると、肝臓で中性脂肪が合成されます。この中性脂肪が血液中を流れて、体脂肪を構成する脂肪細胞に蓄えられ皮下脂肪や内臓脂肪などになります。このため、食事を摂り過ぎると、エネルギーが余り、脂肪となって体に蓄積されるのです。
脂肪蓄積のメカニズム

脂肪が増え過ぎるとどうなるの?
A. 動脈硬化を引き起こします
過剰な中性脂肪の増加は動脈硬化を引き起こす要因の1つで、それにはコレステロールも深く関係しています。
肝臓で合成される中性脂肪やコレステロールは脂質なので、血液(水)に溶けません。そのため、リポタンパクというタンパク質に包まれ血液中に送り出されます。リポタンパクには主に次のようなものがあります。
●カイロミクロン……小腸で生成される。食事で摂った脂肪を体の必要な場所に運ぶ。余りは肝臓へ。
●VLDL……肝臓で合成され全身へ送り出される。中性脂肪やコレステロールを含む。
●LDL……体の必要な場所にコレステロールを運ぶ。
●HDL……消費されずに余ったコレステロールを回収し、肝臓に戻す。
通常、血液中のLDLコレステロールとHDLコレステロールの量は一定に保たれています。ところが中性脂肪が大量に合成されると、血液中のVLDLが増加し、HDLコレステロールとLDLコレステロールのバランスが崩れます。やがて血管壁の内膜にLDLコレステロールが入り込み、動脈硬化を進めるのです。動脈硬化予防には、中性脂肪のコントロールが必要です。
脂肪の蓄積は動脈硬化を促す
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肝臓で合成された中性脂肪は、コレステロールと共に、VLDLとして血液中に送り出される。
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血液中にVLDLが増え過ぎると、LDLが増産され、LDLとHDLのバランスが崩れる。
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消費されずに血液中を漂うLDLが血管壁に入り込み、血管が狭くなって動脈硬化が進行する。
中性脂肪の基準値と体脂肪の目安は?
A. 中性脂肪の基準値は30〜149mg/dL
中性脂肪には基準値があり、30~149mg/dLが適正範囲です。この値は、食事による変動が大きいため、約10時間以上の絶食状態で測定します。
中性脂肪は、過剰に増えても自覚症状がないのが特徴。気づかないうちに症状が進行する恐れがあるので、定期的に健康診断を受けることが必要です。
体脂肪は、年齢や性別によってその目安が異なります。適正値は次の通りです。
●30歳未満の男性……14~20パーセント未満。
●30歳以上の男性……17~23パーセント未満。
●30歳未満の女性……17~24パーセント未満。
●30歳以上の女性……20~27パーセント未満。
体脂肪は、時間や測定する機器によって数値が変動しやすいので、毎日同じ時間帯に計測すれば、自分の体の状態を知る目安になります。
中性脂肪の基準値と体脂肪の目安

中性脂肪の増加が生活習慣病のリスクを高める
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中性脂肪は内臓の周囲にある腸間膜(ちょうかんまく)や大網(だいもう)、腹膜(ふくまく)につきやすく、内臓脂肪の増加につながります。内臓脂肪は、血糖値や血圧を上げる、血栓(けっせん)をつくるなど、様々な生理活性物質を分泌(ぶんぴつ)することが分かってきています。生活習慣病を予防するためにも、中性脂肪をためないことが大切です。