賢く摂って美しく 鉄の働きと美容

学びPoint
1.鉄はコラーゲンの合成にかかわっている
2.赤身の肉や魚から
効率よく鉄を摂取できる
3.毎日コツコツ摂ることが大切

女子栄養大学 栄養学部教授
本田 佳子 先生

ほんだ・けいこ
1983年女子栄養大学卒業。86年虎の門病院栄養部第5科長、92年同栄養部副部長、96年同栄養部部長、02年東北大学大学院医学系研究科修士課程修了、04年より現職。管理栄養士。日本病態栄養学会常任理事、日本臨床栄養学会評議員、日本栄養改善学会評議員など。『栄養ケアのキーワード166』(メディカ出版)他著書多数。
鉄/ Profile
鉄とヘモグロビンの役割
鉄は血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの材料となるミネラルです。ヘモグロビンはグロビンというタンパク質と鉄が結合した物で、主に酸素を運搬する役割を担っています。呼吸によって体内に吸い込んだ酸素は肺でヘモグロビンと結びつき、心臓から動脈を経て体の各組織へ運ばれています➊。そしてヘモグロビンは代謝で生じた老廃物である二酸化炭素を各組織から取り込み、肺まで運んできれいにしています➋。
ヘモグロビンの働き

赤血球の生成と破壊
血液は骨の中心部にある骨髄の造血幹細胞でつくられます。赤血球は全身を循環し、約120日後に脾臓で破壊されますが、鉄は体に欠かせない必須ミネラルのため、肝臓や脾臓で処理された後、その多くは再びヘモグロビンの材料として再利用されます。そのため、出血がなければ体外に排出される鉄は1日1mg程度です。
鉄の代謝サイクル

体内の鉄が不足するとどうなるの?
A. 全身の組織が酸欠になり疲れやだるさが現れます
体内の鉄が不足するとヘモグロビンを順調につくることができず、酸素の運搬や、老廃物である二酸化炭素の回収が滞ってしまいます。すると全身の組織が酸欠状態になったり、二酸化炭素がたまったりして次のような症状が現れます。
●疲れ・だるさ……筋肉は血液が運ぶ酸素や栄養分をエネルギーにして働き、そこで生じた二酸化炭素をヘモグロビンに回収してもらうことで機能している。筋肉が酸欠状態になるとエネルギーをつくり出せず、疲れやだるさが現れる。
●肩こり……肩の筋肉でつくり出された二酸化炭素がうまく回収できず、肩にこりや痛みが生じる。
●動悸や息切れ……心臓が一度の鼓動で送り出す血液の量は一定。全身の組織が酸欠状態になると、心臓の鼓動を速めて、大量の血液を流して酸素を供給しようとして動悸が起こる。同様に、呼吸を速めて大量の酸素を体の中に取り込もうとするため息切れが起こる。
●めまいや頭痛……酸素は脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖をエネルギーに変換する時に必要なもの。脳が酸欠状態になると脳細胞が正常に働きにくくなるため、めまいや頭痛などの症状が現れる。
これらの症状がつらかったり、続いたりする場合は、一度受診しましょう。
鉄不足により起こる症状
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疲れ・だるさ
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肩こり
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動悸や息切れ
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めまいや頭痛
鉄は美容にも関係しているの?
A. 鉄不足はシミやシワ、抜け毛の原因になります
鉄不足の状態だと、肌にもダメージをもたらします。
●顔色が青白くなる……血液が赤い色をしているのはヘモグロビン中の鉄によるもの。鉄不足により血液中のヘモグロビンが少なくなると、皮膚や粘膜の赤みがなくなり、顔色が悪くなる。
●シミが増える……肌への酸素供給量が減って肌の新陳代謝が低下し、シミができやすくなる。
●ハリがなくなりシワが増える……肌の潤いを保つ役割があるコラーゲンの原料はタンパク質で、体内でコラーゲンを合成する際、鉄、ビタミンCが必要。鉄が不足するとコラーゲンが合成できずシワができやすくなる(Q3参照)。
また、髪にもダメージが及びます。髪は毛根にある毛乳頭が酸素や栄養分を毛細血管から吸収して健康を保っています。鉄不足により体内の酸素が少なくなると、毛乳頭まで十分な酸素や栄養分が行き届かず、髪の毛が細くなったり、抜け毛が増えたりします。
鉄不足は美容にも悪影響
顔色が青白くなる
シミが増える
ハリがなくなりシワが増える
髪の毛が細くなる・抜け毛が増える
鉄不足は爪でも分かる
爪は指の末端の血液状態を確認することができる部位です。鉄不足になると、本来ピンク色をしている爪が白く見えるようになります。その状態を放置しておくと、爪に横線が入ったり、爪がスプーンのように反り返ったり、弱くなってはがれたり、溝ができて凸凹になったりします。爪は鉄不足の状態を知るバロメーターともいえます。