ゆをみ Vol.79

脂質コントロールで血管のエイジングを防ぐ チェック編

「人の老化は血管から始まる」ともいわれるように血管ケアはアンチエイジングの要。
年齢を重ねることで硬くなっていく血管をケアしていくには日々の食事や運動で脂質をコントロールすることが大切です。
全身の健康に通じる血管ケア。前向きに取り組んでこれからの元気を育てていきましょう。

あまけい先生 一般財団法人野中東晧会 静風荘病院特別顧問。日本の「性差医療」研究の草分けとして普及に努め、鹿児島大学及び千葉県にて、性差に基づく女性医療の実践の場として女性外来を立ち上げ、治療に当たる。2009年より現職。日本性差医学・医療学会理事。

コレステロールや中性脂肪の
数値をチェックしよう。

コレステロールや中性脂肪の数値を知ることが、セルフケアの第一歩。女性は年齢に応じた基準値があるのでチェックしてみましょう。

コレステロールや中性脂肪は生命活動に不可欠なもの

脂質は敵じゃない!

コレステロールや中性脂肪は増え過ぎると血液の流れを悪くし、血管にも悪影響となります。でも、これらの脂質は決して健康の敵ではありません。右図のように、細胞膜やホルモンの原料となったり、体を動かすエネルギー源となったりする大事な要素なのです。

女性の場合は、閉経後に急に脂質の数値が高くなった方もいるでしょう。でも、慌てないで。女性の体の変化に対応した基準値があるのです。

「そもそも女性と男性ではコレステロールや中性脂肪の検査値が違って当然。それなのに、これまでは男性も女性も同じ値を基準値としていました。また、女性はエストロゲンの分泌量が年齢で変わるため、年齢によっても基準値が変わるのです」と天野先生。参考にしたいのは、次ページの男女・年齢別に分けた基準値です。

年齢によって基準値が変わるのは女性だけ!私たちが参考にしたい脂質の基準値

日本人間ドック学会が150万人の調査結果から導き出した基準値は、
男女・年齢別(女性のみ)。現在の健診の基準値よりも
概ね正常の範囲は広がりましたが、女性の中性脂肪の上限は低くなっています。

女性65歳以上:総コレステロール175〜280mg/dL・LDLコレステロール84〜190mg/dL・中性脂肪32〜134mg/dL 男性:151〜254mg/dL・LDLコレステロール72〜178mg/dL・中性脂肪39〜198mg/dL 女性30〜44歳:総コレステロール145〜238mg/dL・LDLコレステロール61〜152mg/dL・中性脂肪32〜134mg/dL 女性45〜64歳:総コレステロール163〜273mg/dL・LDLコレステロール73〜183mg/dL・中性脂肪32〜134mg/dL ※※総コレステロールとは、LDLコレステロールやHDLコレステロールなどを合計した血液中のコレステロールの総量。上記の基準では HDLコレステロールの基準値は示されていない。
【CHECK!】閉経前なのにコレステロール値が高い人は 閉経前からLDLコレステロール値が高い人は、遺伝的な要因から発症する「家族性高コレステロール血症」が疑われます。生まれつきLDL 受容体に問題があるために起こるもので、食生活などに関係なく発症。この病気の場合、生活習慣の改善だけでコレステロール値を下げるのが難しいため、薬物療法も必要に。早期治療が大切なので、疑われる場合は早めに受診しましょう。

▶次号は食事で脂質コントロールする方法をご紹介します。

なるほど!免疫講座

皆さまからのご要望にお応えしてスタートした免疫についての連載企画。前号では、趣味を持つことの大切さについてご紹介しました。今号ではスローな運動をおすすめする理由をお伝えします。

おくむらこう先生 順天堂大学医学部名誉教授

『ゆをみ』Vol.81~83では、奥村先生が皆さまからお寄せいただいたご質問にお答えします。

頑張り過ぎはNG ちんたら運動のすすめ

そこそこの運動が◎

免疫が下がる原因の1つに、運動による体へのストレスがあります。ウォーキングやストレッチなどそこそこの運動では免疫は上がり、下がることはありません。ただ体に負荷をかけ過ぎる激しい運動をした後は、もとより免疫が下がってしまうというデータがあります。

これまで申し上げたように、免疫の要となっているNK細胞は腸管に多く集まっています。運動中は交感神経が優位になるため、腸管など消化管の働きが弱くなります。また、筋肉で多くの酸素を必要とするため、筋肉の血液量が増えて消化管の血液量は減ります。運動後はその血液が消化管に戻ってくるためオーバーフローしやすくなり、腹痛や食欲低下など消化管の不調が現れやすくなるのです。

激しい運動はしないことが一番ですが、どうしてもしなければならない時は、運動前に乳酸菌や納豆菌などを補給して腸管の働きを整えておくことです。オリンピックに出場するような選手は激しい運動をしなければなりません。ですから、レスリングやバレーボールの選手の多くは乳酸菌を摂っています。

生きた乳酸菌のほうがよい?

乳酸菌は生きているもののほうがよいといわれていますが、エビデンスはありません。死んでいても腸内環境を整えたり、免疫細胞を刺激したりすることが分かっています。また、食事から十分な乳酸菌を摂るには相当な量を摂取しなければなりません。食事の補助として乳酸菌が含まれたサプリメントなどを活用することもよいでしょう。

スポーツマンは短命?

体育会系の出身者は、文化系・理科系の出身者よりも平均寿命が8歳ほど短いといわれています。その原因は、激しい運動により体内で発生する多くの活性酸素にあるとも。活性酸素は体内の有害物質や細菌・ウイルスなどを攻撃してくれるので免疫に必要なものといえます。しかし必要以上に増えると、体内で活性酸素を無毒化する機能が追いつかなくなり、正常な細胞も攻撃してしまうのです。

紫外線やお酒、タバコ、食品添加物など、活性酸素を大量に発生させる要因は日常の中にたくさんあります。これ以上に活性酸素を増やす行為は避けることをおすすめします。

活性酸素とは

活性酸素は、空気中の酸素が体内に入って変化したものです。物質を酸化させる力が非常に強く、体をサビさせ、老化の原因となります。もともと体内には抗酸化作用をもつ酵素があり、活性酸素を無毒化してくれますが、ビタミンA、C、Eなど抗酸化作用のある食品を積極的に摂ることもおすすめします。

ドクターQ&A 今、大人のぜんそくが増えています。「長引く咳に要注意」

わずらわしい咳に長く悩まされている……
なんてことはありませんか?
咳にはかぜ以外の病気が潜んでいる可能性も……。
もし長期間、咳が続いているようなら、放置してはいけません。
3週間以上長引く咳の原因疾患 長引く咳の原因や対処法を知っておきましょう。

だちみつる先生 山王病院アレルギー内科
国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授。医学博士。
1971年昭和大学医学部卒業後、同大学医学部第一内科学入局。山梨赤十字病院内科部長を経て、80年昭和大学医学部第一内科専任講師、その後同助教授、同主任教授に。89年ロンドン大学Royal Postgraduate Medical School臨床薬理学教室に留学。日本大学医学部呼吸器内科学客員教授を経て、現職。
公益財団法人日本アレルギー協会理事長。

Q1咳が3週間以上続いているのですが.....

Aかぜ以外の疾患の可能性があります

咳には、たんを伴う湿った咳の湿性がいそうと、痰を伴わない乾いた咳の乾性咳嗽があります。

そもそも咳は、体の防御反応であり、外部からウイルスや細菌、ホコリなどの異物が気道に入り込んだのを排除しようとして起こります。また痰は、気道から分泌される粘液で、侵入した異物を包み込んで取り除いてくれるものです。

咳やそれに伴う痰は、こうした重要な役割を担っているため、直ちに止めなければいけないものではありませんが、3週間以上続く場合は注意が必要です。

一般にかぜの咳であれば、3週間も経てば必ずよくなります。それが、3週間経っても咳が一向に治まらず、回復の兆しもない場合は、かぜ以外の疾患の可能性があるのです。このような時は、まず、かかりつけの医師に診断を仰ぎましょう。診療を受けても症状が改善しない場合は、かかりつけの医師と相談の上、アレルギー科か呼吸器科を受診することをおすすめします。

3週間以上長引く咳の原因疾患
COPDとは? COPDは「慢性閉塞性肺疾患」ともいわれています。慢性的な肺の機能低下が原因で起こり、かつては「肺気腫」「慢性気管支炎」とも呼ばれていました。ぜんそくの症状と類似点が非常に多く、見分けがつきにくい病気です。主に50歳以上で20年以上の喫煙歴がある人に見られ、喫煙が最大のリスク因子です。

Q2「ぜんそく」とはどのような病気?

A気道が狭くなり発作を伴う病気です

ぜんそくとは、正式には「気管支ぜんそく」と呼ばれ、空気の通り道である気道に、慢性的な炎症が起きて、気道径が狭くなる病気です。気道の粘膜上皮に常に炎症があるので、ほんの少しの刺激にも気道が過剰に反応して、咳込んだり、呼吸困難、喘鳴(ぜんめい)などの発作を引き起こしてしまいます。

一般的に「咳ぜんそく」といわれているのは、1カ月以上続く空咳を主な症状とし、喘鳴や呼吸困難は起きません。気管支ぜんそくよりも症状は比較的軽いですが、激しい咳込みが起きることも。ぜんそくの前段階と考えられ、放置していると3、4割はぜんそくに移行していきます。

近年、気管支ぜんそくは、大人の有症率が上昇し、患者数は子どもより大人のほうが多くなりました。成人ぜんそくの内訳は、小児ぜんそくからの持ち上がりが2割で、残りの8割は大人になってから発症。40~80代でも、年齢に関係なく発症するのです。吸入ステロイド薬の普及でぜんそく死は激減したものの、成人ぜんそくの患者数は、過去30年間で3倍に増加しています。

健康な人の気道
ぜんそく患者の気道
咳ぜんそくから気管支ぜんそくへ 咳ぜんそくの症状:慢性の咳/突然の激しい咳→進行・重症化→気管支ぜんそくの症状:ヒューヒュー・ゼーゼーという喘鳴/突然の激しい咳/突然の息苦しさ

Q3ぜんそくを防ぐためには?

Aぜんそく発症の原因の対策が必須です

ぜんそくの多くは、ダニ、カビ、ペットのフケなど様々なアレルゲンの侵入や、かぜなどのウイルス感染がきっかけで発症します。また、アレルギー性鼻炎をもつ人は、ぜんそくを発症しやすくなります。

一番の対策は、咳の原因となるウイルスやアレルゲンを避けるよう、マスクを着用し、手洗いやうがいをしっかり行うこと。室内にダニや花粉などのアレルゲンを増やさないよう、こまめに掃除機をかけたり、寝具を乾燥、洗濯したりすることも大切です。

また、気道の刺激は避けたいもの。喫煙は絶対にNGですが、その他にも冷気を吸い込むことや強い匂いを嗅ぐことも、なるべく避けるようにしましょう。こうした刺激に対してはマスクの着用が有効です。

ストレスや過労も、気道を過敏にさせる要因となるので、無理をせず、睡眠や休息を十分とり、生活リズムを整えましょう。

気道を刺激するもの 夏の冷房、冬の外気などの冷気を吸い込む/寒暖差が大きい/香水の強い匂い/タバコや線香の煙